タカチホヘビ 特徴や生息地、採集・飼育などについて解説。

タカチホヘビ
タカチホヘビ

分類  爬虫網 有鱗目 ヘビ亜目 タカチホヘビ科 タカチホヘビ属
学名  Achalinus spinalis
大きさ 全長30~60cm
分布  本州(千葉県除く)、四国、九州と、その周辺の一部の沿岸島
すみか 山地から低地の湿った森林など
食べ物 ミミズ

日本本土には8種類のヘビがいます。

その中でも出会うことが少なく、珍しいと言われる、タカチホヘビ。

またタカチホヘビは、日本本土の他のヘビとは異なった外見や生態を持つ、個性的なヘビです。

この記事では珍蛇・タカチホヘビの、生息地や食べ物、飼育などについて解説していきます。

種名の由来

まず、タカチホヘビという種類名について説明しましょう。

タカチホヘビの「タカチホ」は、「宮崎県・高千穂」が由来と思われることがありますが、実はまったく関係ありません。

名前の由来は、高千穂宣麿(たかちほ・のぶまろ 1864-1950)という、このヘビを最初に採集した昆虫学者・貴族院議員です。

この高千穂宣麿により、1895年(明治28年)7月、福岡県で初めて採集されました。

分類

爬虫類有鱗目ヘビ亜目の「タカチホヘビ科」は、5属20種で構成されるグループです。

この5属のひとつ「タカチホヘビ属」には、本記事で解説している日本本土のタカチホヘビ、奄美・沖縄に生息するアマミタカチホヘビ、八重山諸島に生息するヤエヤマタカチホヘビの日本産3種類に加え、中国からベトナム北部、台湾や中国にも同属の種がおり、合計15種が知られています。

大きさ、外見・特徴

大きさは全長30㎝~60㎝ほど。体の色は全体的に茶色で、黒っぽい線が背中に入っています。

幼蛇は体全体的に黒っぽく、背中の線は目立ちません。35㎝以上に成長したメスは体が黄色っぽくなってきます。

そして、真珠光沢のあるビーズのような鱗がタイルのように体を覆っています。

また、普通のヘビは鱗と鱗が重なって皮膚が鱗で保護されているのですが、タカチホヘビは鱗と鱗の間の皮膚がむき出しになっています。

なので、乾燥と高温にとても弱いという特徴があります。

分布

本州・四国・九州にかけてすんでいます。

しかし不思議なことに、なぜか千葉県では確認されていません。

その理由は、次のような説があります。

6000年ほど前、千葉県(房総半島)は、縄文海進によって本州からほぼ切り離されている、島に近い状態でした。それ以前にも房総半島は、海水面の上昇・下降によって、本州にくっついたり切り離されてりしていました。

海が障壁となり、これらの地域にはタカチホヘビが分布を広げられなかった、と考えられています。

タカチホヘビは弱々しく、移動能力が低いので、日本にすむ他種のヘビと比べ自然障壁によって隔絶されやすいのでしょう。

また、島にもほぼ生息しておらず、本土からあまり離れていない、いくつかの沿岸島でしか確認されていません。

なので、分布域であっても、タカチホヘビがすんでいないフィールドも多くあります。

たとえば、筆者のすまいの近くにある丘陵では、タカチホヘビが確認されていませんが、周辺の別のいくつもの丘陵には、生息しています。

このタカチホヘビのいない丘陵は、周りを住宅地に囲まれ他の自然から孤立した「緑の島」状態となっています。

すみか

山地から低地までの湿った森にすんでおり、沢沿いの林道などで見かけることが多いです。

苦手な高温と乾燥から身を守るため、普段は土の中に潜って暮らしており、地表に出てくるのはおもに雨が降ったあとの夜です。

このような生態が、タカチホヘビが珍しい蛇とされている理由です。

珍しいヘビというより、人間の活動パターンとかぶりにくいので、出会う機会が少ないヘビといった方が適切かもしれません。

実は、いるところには、結構まとまって生息していたりします。

これらの点は、同じく珍しいとされるシロマダラと似ています。

遭遇する場所がこのシロマダラと同じ環境であることが多いです。また、シロマダラはタカチホヘビを好んで捕食します。シロマダラは夜行性で、かつ雨上がりに出てくることが多いので、このタカチホヘビを狙っていると思われます。

シロマダラ

タカチホヘビを見つけるには、タカチホヘビがすんでいるフィールドの、雨上がり夜の林道や道路をくまなく探していくか、または木材などが積み重ねられた場所をひっくりかえしたり(土地所有者に断りましょう)土を掘ったりしていくしかありません。

下の画像は、筆者がタカチホヘビを実際に採集した場所の一例です。

タカチホヘビの生息環境

タカチホヘビがすんでいるフィールドを見つけるには、道路や側溝などでひからびて死んでいるタカチホヘビを探すことで、アタリをつけることができます。

食べもの

ミミズが主食です。野生のタカチホヘビは、基本的に土の中や朽木の下、雨の降った後の地表などでミミズを探しています。

それ以外にも、ヤマビルやサンショウウオの幼体を食べた記録があります。

もしタカチホヘビを飼育する場合は、山や森にいるミミズを捕まえてこなくてはならないので大変です。

ミミズならそのへんの公園や林で簡単に手に入りそうな気がしますが、しかし、エサとして定期的に一定数のミミズを捕まえてくるとなると、そう簡単ではありません。

一度にたくさんのミミズを捕まえてくるにしても、そのミミズを死なないようにきちんと飼育するのもなかなか大変です。

釣り餌用のシマミミズなら、近くに釣具店があれば簡単かつ定期的に手に入りますが、シマミミズはルンブロフェリンという毒成分を持つことや、重金属に汚染されている可能性があることから使わない方が良いです。そもそもタカチホヘビはシマミミズの味かにおいが気に入らないのか、シマミミズをあまり食べないようです。

なので、日本の山や森にいるミミズ(フトミミズ)をあげる必要があります。フトミミズは森の豊かな腐葉土を食べるミミズです。

ハニーワームなど昆虫の幼虫を食べることもあるので、エサが切れた時のつなぎには使えるかもしれません。

飼育

高温・乾燥に非常に弱いため、飼育は難しいです。

まず、高温対策として、夏場にはタカチホヘビを飼育している部屋のクーラーをつけっぱなしにするなど暑さ対策の必要があります。

そして、床材が渇かないように定期的に湿らせてあげる必要もあります。

床材には黒土や湿らせた水ごけを使い、その上には落ち葉などをしきつめて、土に潜ったり落ち葉の下に隠れたりできるようにしてあげます。

汚れに弱く病気にもなりやすいので、それらの土も頻繁に変える必要があります。

また、前項で説明したように入手の大変なミミズをエサとして常に確保しないとなりません。

さらに、タカチホヘビはいつも潜っているので、生体を見ることがあまりなく、飼育をしている実感もわかず、飼育のモチベーションも上がりづらい。

これらの点からタカチホヘビは、飼育の難しいヘビといえ、飼うにはそれなりの覚悟が必要です。

危険性・性質・毒

毒はありません。また、歯も非常に小さいので噛まれても危険はありません。個体によっては、首を持ち上げておそろしげに威嚇するようなこともありますが、見かけ倒しです。

高温に弱いので、触ると人間の体温によりタカチホヘビの命が危険になるので、むしろ逆にタカチホヘビのために触らない方が良いといえます。数分さわるだけで弱ってくるほどです。

寿命

3~5年ほどと考えられています。ただし、もともと飼育が難しいので寿命をまっとうさせる前に死んでしまう可能性が高いこと、野生での生態もわかってないことも多いので、正確な寿命はわかっていません。

まとめ

  • タカチホヘビという種名は高千穂宣麿という人物が由来
  • タカチホヘビのなかまは日本には3種類
  • 30~60cm
  • うろこが重なっておらず皮膚がむきだしで、乾燥と高温に弱い
  • 本州・四国・九州の湿った森などにすんでいる
  • 食べ物はミミズ
  • 飼育は難しい
  • 毒は無い

おすすめ書籍・参考文献

日本の爬虫類図鑑で何を買えばよいか?と聞かれたら、まずこの本をおすすめします。写真も美しく、文章も、著者の経験を交えながら面白く書かれいるので読んでいて飽きない。それでいて図鑑として必要な、分布や大きさなど各種データがわかりやすく書かれています。

上記2冊はお子さんにおすすめしたい本であるが、内容は国内第一線で活躍する研究者によって書かれているため、国内外の両生類・爬虫類を全般的に知りたい大人にもお勧めできる本。基本的に、学研や小学館の児童向けの図鑑は内容のクオリティが高く、かつ写真や図が多く使われておりわかりやすいので、大人の入門者にとっても良い選択肢になります。

世界中のありとあらゆるヘビを掲載した大型本。掲載種数、写真数が圧倒的で、分厚い大型本であるというのに、ひとつの本では収まりきらないのか、この本ではボア・パイソン類(ニシキヘビのなかま)は掲載しておらず、別にボア・パイソン編の大型本で刊行している。このことからも、いかにこの書籍の情報量が膨大であるかがわかる。2つ合わせて世界のヘビ全部入り。大変マニアックな外国産のタカチホヘビのなかまの和名まで掲載している。

日本爬虫両棲類学会による、日本産の両生爬虫類の最新知識が凝縮した本。学術的な本なので、お子さんや初心者向けというより、研究者やハイアマチュア向けの図鑑。最高レベルの爬虫類両生類研究者たちによる執筆。本格的に爬虫類両生類を勉強したい人は必ず手に入れたい一冊。

最初に紹介した「山渓ハンディ図鑑」の著者でもある富田京一さんによる、アウトドア雑誌「Bepal」における生き物連載を集めた本。タカチホヘビについて4ページにわたり、体験談も交えながら詳しく書かれています。特に、著者による飼育経験について書いてあるので、タカチホヘビの飼育に興味ある人は読んでみてください。

タカチホヘビの名前の由来になった博物学者・高千穂宣麿男爵がどんな人物であったのか、詳しく書かれています。タカチホのマニアックな部分に触れたい方はぜひ。日本の動物学の歴史をたどる、とても面白い本です。