シマヘビ(有隣目 ヘビ亜目 ナミヘビ科 Elaphe quadrivirgata) 

和名 シマヘビ(縞蛇)
分類 爬虫網 有隣目 ナミヘビ科
学名 Elaphe quadrivirgata
全長 80~150cm
分布 北海道・本州・四国・九州と周辺の離島(国後島・飛島・粟島・佐渡島・隠岐・見島・壱岐・五島列島・御蔵島以北の伊豆諸島・大隅諸島)

赤い虹彩、縦長の瞳から強面の印象のあるシマヘビ。一方、くっきりと入った縦のラインや細い体形など、スマートなイメージもあるヘビです。今回は、ヘビの中では最もよく出会う種のひとつであるシマヘビについて解説します。

シマヘビはどんなところにすんでいるか

シマヘビは北海道・本州・四国・九州と周辺の離島など日本全国的に住んでいます。生息環境としては、エサとなるカエルが多くすむ田んぼに特に多いですが、山から平地、田んぼから草むらまで、ありとあらゆる環境に生息しています。

新潟・八海山をバックに

シマヘビはなぜシマがあるか

くっきりとしたストライプが入る個体

種名の由来である縦じま模様。これには一体、どんな意味があるのでしょう。

それは、シマヘビが敵に見つかって逃げる際のめくらましであるのではないかと考えられています。

縦のしまがあると、シマヘビが動いて逃げ去っていても、まるでシマヘビが止まっているかのように敵の目に錯覚を起こさせ、そのすきにシマヘビはしげみの中に逃げ込んでしまうのです。シマヘビがパッと視界から消え失せるように見えるのです。

縞の薄い個体

一方、上の写真のようにしま模様の薄い個体もいます。地域によって縞の薄い個体の多い地域とそうでない地域があります。上の写真は長野県で撮影された個体です。また北海道に棲むシマヘビの多くが、縞が薄いといわれています。個体差・地域差が激しいヘビなので、他種(特にアオダイショウ)と間違えられることも多いです。

シマヘビの食べもの

シュレーゲルアオガエルを捕食するシマヘビ

シマヘビの食べ物は、ネズミ、鳥、鳥や爬虫類の卵、トカゲ、ヤモリ、ヘビ、カエル、サンショウウオ、魚まで、なんでも食べるゼネラリスト。

中でも、特にカエルを好み、次にヘビやトカゲを好みます。

アオダイショウに比べて締め技が苦手なシマヘビ

シマヘビは、鳥獣食のスペシャリスト・アオダイショウに比べると、捕食時の締め技がアオダイショウほど上手ではないです。また、かみつく力も同サイズだとアオダイショウの方が強いようです(咬まれるとアオダイショウの方が痛い)。主に、鳥獣を食べる種のヘビは、獲物を絞め殺すか、毒ヘビなら毒で動けなくしてから食べます。

実はヘビにとって、ネズミは反撃を喰らう可能性があるやっかいな相手。強そうに見えるヘビも、手足が無い上に食いちぎる歯もなく鱗は柔らかいので、鋭い門歯のあるネズミとまともに格闘すると傷つけられてしまうのです。なので、完全に絞め殺してから食べるのが安全で、絞め殺す際にネズミを押さえつけるために咬む力も強くなるよう進化したのが、アオダイショウなどネズミを食べるヘビなのです。

一方、反撃するツメやキバをもたないカエルは、捕まったらただもがくだけ。特に大きなカエルでなければ、絞め殺さずとも生きたまま丸呑みにできます。なので、カエルを主食とするシマヘビは、アオダイショウほど締め技を洗練させる必要がありませんでした。

シマヘビは、ヘビを食べる

シマヘビは「蛇食性」があります。蛇食性とは読んで字のごとし、蛇を食べる性質のこと。

シマヘビは、アオダイショウなどに比べると鱗の数が少なく皮膚があまりのびず大きな餌を呑むのが苦手なので、細くて呑み込みやすいヘビを獲物として好むのです。

実はヘビにとって、ヘビはとても都合の良い獲物なのです。

なぜならヘビがヘビを食べる場合、相手は細くて呑みやすいうえに長いので、ヘビが一度に食べる餌としてのボリュームが大きいということになります。

例えば、ヘビがあごを外しどんなに大きく口を開いても口に入らないくらい大きすぎるカエル、なら食べることができませんが、そのカエルと同じ体積であってもヘビならば、体が細長いのでヘビの口に入れることができ、食べることが可能というわけです。

つまり蛇食性は、一度の食事で豊富な食物を得ることができる、効率的な食性なのです。

ただ飼育・運搬時には、シマヘビと他のヘビ(同種シマヘビでも!)を一緒にいれるとシマヘビが他のヘビを食べてしまう可能性があるので注意しましょう。

シマヘビの幼体(子供)

幼体。成体とは色や模様が大きく異なる。

シマヘビの幼体は、写真のとおり親と全然色が違います。その色からアズキヘビと呼ばれます。アオダイショウの幼体がマムシと間違えられることが多いですが、シマヘビも独特の色や模様、目つきの悪さから、マムシと間違えられることが多いです。シマヘビの幼体は、成体を見かける確率の高さのわりにはあまり見かけない印象です。

シマヘビの黒化型(カラスヘビ)

シマヘビの黒化型(通称カラスヘビ)

カラスヘビとは、シマヘビの黒化型のことをいいます。黒化型は、他種のヘビでも見られるのですがその多くはシマヘビです。伊豆大島のシマヘビは、ほとんどがカラスヘビです。

シマヘビのアルビノ

シマヘビのアルビノ個体

レアですが、アルビノシマヘビもたまに見つかります。

シマヘビは危険か

シマヘビに毒はありません。性質は荒いですが、人に会うとあっという間に逃げて行ってしまうので、野外で全くおそれる必要はありません。ただし捕まえると、激しく攻撃してくる気の荒い個体がおおく、尾をバタバタとふるわせながら威嚇してきます。咬まれると出血はするものの、よほどの大型個体でなければ大きなケガをすることはないでしょう。ただし、ヘビの歯は細く歯が折れて皮膚内に残ることや、傷口からばい菌が入ることもあるのでむやみに噛まれない、噛まれた場合は消毒などの処置をした方が良いでしょう。

おすすめの図鑑

以下の「山渓ハンディ図鑑 日本のカメ・トカゲ・ヘビ」は、最初の爬虫類図鑑におすすめの一冊です。筆者は爬虫類図鑑をたくさん持っていますが、この図鑑はただデータを羅列しているのではなく、著者の体験を交えながら解説しているので、楽しく読めると思います。また、当ブログでは無地・カラスヘビ・アルビノを掲載しましたが、この本ではシマヘビのあらゆるパターンの写真が掲載されています。もっと深くシマヘビについて知りたければ、まずこの一冊がおすすめです。筆者は改訂前と改訂後の2冊持ち、フィールド遠征などに携帯します。

以下の「小学館の図鑑NEO 両生類・はちゅう類」は、子供のいるうちにおすすめです。子供むけといっても、執筆者と写真家は日本の爬虫類界を代表する面々で、クオリティは折り紙付き。日本のヘビは全種載っているものの、世界中の爬虫類が載っているので、世界の爬虫類を全体的に知りたい方は、こちらの本がおすすめです。

筆者の書斎の本棚「爬虫類両生類コーナー」

爬虫類関係のおすすめ書籍はたくさんあるのですが、まずは山渓が良いかなと個人的には思います。