2月の北海道は、タンチョウの観察に最適な季節。
「真冬の北海道?しかも野外に…?」本州以南に住む人なら、そう思うかもしれません。しかし北海道は公道の除雪がかなり行き届いていますし、また、防寒対策もバッチリしておけば、寒さも意外に大丈夫。
この時期にしか見られない、極寒の地で力強く生き抜く生き物たちの姿を目の当たりにすれば、その肌で感じる冷たい空気すら、自然と一体化する心地よさとして感じられることでしょう。
目次(クリックで各項目にとびます)
1.雪裡川・音羽橋のタンチョウ
北海道釧路市の北西部に位置する鶴居村。
タンチョウの生息地で、村名もそれに因んでいます。この村には、釧路湿原に繋がる雪裡川(せつりがわ)が流れており、川にかかる音羽橋から、タンチョウの群れを観察することができます。
音羽橋は、タンチョウを驚かすことなく観察できる貴重な場所で、タンチョウの聖地とも呼ばれ、日本のみならず世界中からカメラマンが集まります。
橋からおよそ100mの距離にタンチョウが100羽以上いる光景は圧巻です。
たくさんのカメラマンが集まるので、タンチョウを観察するには、朝早くに現地に入った方が良いです。
私が現地入りした朝6時30分にはすでに人が集まっていましたが、なんとか良く見える橋の手すりの場所に潜り込むことができました。
また、日が昇り気温が上がってくると、タンチョウは餌を求めて別の場所に飛び立っていきます。
日によって飛び立つ時間も違うのですが、僕の観察した日(2月12日)は9時頃から飛び立ち始めました。タンチョウは橋に向かってくるように飛んでくるので、真正面からのタンチョウや、我々の頭上を飛ぶタンチョウの群れを見ることができます。
タンチョウは、キツネなどの天敵から身を守るため、川をねぐらとしています。
冬の鶴居や釧路はマイナス20度を下回る寒さなので、冷たい川に足をつけていて寒くないのか?と心配になりますが、雪裡川は豊富な湧き水のため水温が高くなり凍らないので、タンチョウは安心してねぐらとすることができるのです。
キタキツネ
音羽橋の近くに広い駐車場があるのでレンタカーで行くか、ネイチャーガイドに連れて行ってもらうなどしてアクセスします。市街からは遠いので、車以外で行くのは困難です。
頭が茶色い個体は雛。親はザリガニを捕まえると、固いハサミをちぎって与えるなど、大きな愛情を持って子育てをします。子供は、あと1か月で親離れの時期が来ることなど知るすべもなく、親からの最後の愛を精一杯受けます。
音羽橋の場所
2.鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ
雪裡川を飛び立ったタンチョウは、餌場に向かいます。その一つが、この「鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ」。
タンチョウとその生息地の保護・保全を目的に、1987年にオープンした施設です。サンクチュアリには拠点施設となるネイチャーセンターと給餌場があり、レンジャーが常駐しており、さまざまな活動をしています。
10月から3月の間だけ開館しており、特に1月から3月上旬には給餌場にて、雪原で繰り広げられる求愛のダンスを見ることができます。
また2月下旬あたりから、親が子どもを追い飛ばしたり蹴ったりするような行動も見られます。独り立ちを促しているのです。この頃を境に、親子は離れて暮らすようになります。
鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリへのアクセス
3.阿寒国際ツルセンター
「阿寒国際ツルセンター」にも給餌場があり、たくさんのタンチョウが集まります。
ここは、「人工給餌発祥の地」と言われています。タンチョウは、江戸時代までは北海道各地にたくさんいたのですが、明治時代に入ると激減し、さらに大正時代になると姿を消してしまい、一度は絶滅したと思われていました。
しかし大正時代末期に、数十羽が生息していることが確認され、その後特別天然記念物に指定され保護されましたが、なかなか数が増えませんでした。
1950年頃、現在センターがあるこの地で、畑にまかれた乾燥トウモロコシをタンチョウが食べに来る姿が目撃されました。
これをきっかけにタンチョウに給餌を始め、順調に数が増え、現在では1000羽を超えるほどになりました。
タンチョウ
阿寒国際ツルセンターは、タンチョウの資料が展示してある本館「グルス」と、給餌場を観察できる分館「タンチョウ観察センター」があります。
タンチョウ観察センターには300羽を超える野生のタンチョウが飛来し、センターは早朝にトウモロコシを、12月から2月末までは午後2時にウグイなどの活魚を与えます。
午後2時の給餌の際には、オジロワシやオオワシなどの猛禽類や、キタキツネも餌を求めてやってきます。どこからともなく野生の大型鳥類が現れて、餌を奪い合う姿は迫力満点。タンチョウ以外の動物を楽しめるのが、このセンターの魅力です。
大きなカメラを担いだ欧米人のカメラマンも見られ、世界から注目される、野生動物のホットスポットといえるのではないでしょうか。
オジロワシ
阿寒国際ツルセンターへのアクセス
★行程まとめおよび注意点
※行程表
AM5:30 釧路プリンスホテルを出発(ネイチャーガイドと待ち合わせ)
AM6:30 雪裡川にかかる音羽橋に到着
AM9:00 雪裡川のタンチョウが飛び立ち始める
AM9:50 鶴居・伊藤サンクチュアリに到着
PM12:10 阿寒国際ツルセンター付近のレストラン「赤いベレー レストラン鶴」で昼食
PM13:00 阿寒国際ツルセンターに到着
PM14:00 阿寒国際ツルセンター給餌の時間(オジロワシやオオワシも飛来する)
PM16:00 阿寒国際ツルセンター出発
釧路プリンスホテル
レストラン「赤いベレー レストラン鶴」のミックスハンバーグ(阿寒産馬肉とえぞ鹿肉のミックス)
※宿泊予約の際の注意
最初のポイントである音羽橋、実は宿泊した釧路プリンスホテルから、距離にして30kmほどもあります。
鶴居村周辺の宿がすべて埋まってしまいとれなかったので、やむなく遠くのホテルに宿泊したのです。2月は、世界中からタンチョウを撮影するカメラマンが集まるため、宿によっては1年前から満室、などということもあるそうです。宿泊の際は、前もって計画的に予約した方が良いでしょう。
たた、個人的には、前日の夜に釧路市街をぶらぶら食べ歩きもできたので、結果オーライでした。音羽橋までは30kmあっても、信号も少ないので40分もあれば現地に着きますしね。