和名 アオダイショウ
分類 爬虫網 有隣目 ナミヘビ科
学名 Elaphe climacophora
全長 110~200cm
分布 北海道、本州、四国、九州のほか、国後島、奥尻島、佐渡島、伊豆大島、新島、式根島、神津島、隠岐島、対馬、壱岐、薩南諸島などに分布。
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アオダイショウは日本最大のヘビの一種
アオダイショウは、全長100~200cmで、日本のヘビの中でも最も大きなヘビの一種です。沖縄には、ホンハブ、アカマタ、サキシマスジオ、ヨナグニシュウダなど、大型個体が2mを超える大きさのヘビが何種類かいます。
アオダイショウは、成体でも大抵は150cm~170cm程で、200cmを超える個体に出会うことは、なかなか難しいですが、地域によっては巨大な個体が多く発生するところもあります。
アオダイショウのすみかとくらし
山地から平野まであらゆる環境に棲み、田畑や草むら、河川敷などでよく見られます。
市街地の中の公園や神社、人家などにも棲んでおり、逆に人里離れた場所ではあまり見られない「人とともに生きるヘビ」です。
木登りも泳ぎも得意で、木に登ったり、田んぼ・池で泳いでいる、活動的な姿を見かけます。
春先には、石垣にある雨水排水口から体を半分出して、日光浴をしている姿によく出会いますね。
アオダイショウを見つける場所や時期は?
地域にもよりますが、おおむね4月後半~11月くらいに見られます。特によく出会うのは、まず冬眠から覚めたばかりの4月下旬に、石垣のある排水口パイプにいます。
6月頃は繁殖期なので、最もアオダイショウに遭遇しやすい時期といえます。この時期に石垣や草の多い小川の周辺を歩いていると、遭遇することが多いでしょう。この時期は気温が高いので、水辺で体を冷やしている姿も見かけます。
筆者は仕事でヘビ駆除(捕まえて逃がすだけ)をしていたことがありますが、依頼が入るのはだいたいこの時期が多かったです。
この動画は6月頃の暑い日に、住宅街に流れる川に現れたアオダイショウです。
よく見かけるのは、以下の写真のように、住宅地の中を流れる川の周りの石垣で日向ぼっこをしている姿です。
森や山の深いところにいってアオダイショウを探すよりも、郊外を流れる石垣のある川を見ていった方が、簡単に見つかると思います。特に、写真のように排水口があり、最近多いシンプルで規則的なコンクリートのタイプではなく昔ながらのいびつな石垣の方が、アオダイショウは棲みやすいので、見かけることも多いです。
こういったシチュエーションで、6月~梅雨明けくらいにはかなりの頻度みかけます。
アオダイショウの食べ物
餌は、幼体時はカエルやトカゲを好み、成長するとネズミなどの小型哺乳類や鳥類が主食となります。農作物を荒らすネズミを食べることから、農村では大切に扱われる地域も多いです。
ただ、鳥やその卵を食べるため、養鶏農家や小鳥愛好家からは嫌われることが多いようです。
アオダイショウは哺乳類・鳥類殺しのスペシャリスト
アオダイショウは、巻き付く力が非常に強いヘビです。また噛む力も強く、噛まれると大変痛いです。
これは、ネズミなど攻撃性の高い動物を餌にしているためで、餌に反撃されないよう、力強く噛みつき絞め殺す能力を獲得したから、と考えられています。
恒温動物で代謝の高い哺乳類や鳥類は、動きが活発で知能も高く、変温動物のヘビからすると、倒すのにやっかいな相手。
しかし、代謝が高いことのデメリットがあります。それは、窒息に弱いこと。だからアオダイショウは、絞め殺し能力を高めることで、哺乳類・鳥類を効率的に手早く殺傷することが可能となり、主食とすることができるのです。
カエルなど反撃力が弱い動物を食べる時は、絞め殺さずそのままのみ込むことが多いようです。
アオダイショウの繁殖
地方によりますが、3~5月に冬眠から目覚め、5~6月に交尾をし、7~8月に産卵します。
筆者の住む東京西多摩では、6月にしめ縄のように絡みついた交尾シーンを見かけることが多く、またこの時期にアオダイショウに会うことが非常に多くなります。
アオダイショウに毒はある?
アオダイショウは無毒のヘビで、噛まれたら非常に痛いものの、命に関わるようなことは基本ありません。
ただ、ネズミなど野生の生き物を食べているので、口内の雑菌により患部が炎症したすることもあります。また破傷風の危険もあります。
アオダイショウの歯が折れて、噛まれたところに残ってしまった、なんて例もあります。
むやみに噛まれないようにし、噛まれた場合はすぐに消毒をしましょう。
アオダイショウの子どもはマムシに似ている
アオダイショウの幼体は、親とは違い、背中に斑紋があり、マムシによく似ています。これは、まだ小さく弱い幼体の時に、マムシに擬態して敵を怖がらせるためと考えられています。
しかし、人間には逆効果のようで、アオダイショウの幼体はマムシと間違えられて、殺されてしまうこともよくあります。
比較してみると、マムシは大きな銭型模様があるのに対し、アオダイショウの幼体はハシゴ状の模様になっています。またマムシは瞳が縦長いですが、アオダイショウは瞳が丸いです。
ヘビに見慣れている人は、見分けるのは容易ですが、そうでない人は結構間違えるようです。ヘビの見分けに自信が無ければ、ヘビに不用意に手を出さないのが一番です。
マムシの危険性ついては、以下の記事に詳しく書いていますので、よろしかったら合わせてご覧ください。
アオダイショウの性質は
アオダイショウは一般的におとなしいヘビとして図鑑などに紹介されています。実際、攻撃的なシマヘビと比べると、人にあまり攻撃してこない個体も多いです。
しかし、個体によって、またその時の環境や気分によって、かなり攻撃的になったりもします。
しっぽをふるわせ、ガラガラヘビのように音を出し威嚇します。しかしガラガラヘビは、しっぽ自体で音を出すことができるのですが、アオダイショウは地面にしっぽを打ち付けることで音が鳴っているだけです。
アオダイショウの寿命
アオダイショウは飼育下では15年程度、野生では10年程度といわれています。
飼育下では、岩国で飼育されていたシロヘビが28年生きた記録があります。
アオダイショウの体色
名前に「青」と入っていますが、実際の見た目上は、灰褐色をベースにやや緑がかった色をしていることが多いです。
ただし個体差があり、青みの強い個体もいます。特に北海道に多く、ヘビ飼育者の間では「エゾブルー」の愛称で人気があります。
アルビノアオダイショウ(シロヘビ)
写真の個体は、アオダイショウのアルビノ。いわゆる「シロヘビ」です。
白というより黄色っぽいですが、成長すると黄みが薄くなり、さらに白くなります。アオダイショウの場合、完全な純白にはならないようです。特にアオダイショウには独特の模様があるので、アルビノでも幼体時は特に模様が目立ちます。
シロヘビはアオダイショウだけではない
上の写真はアオダイショウではなく、シマヘビのアルビノです。
シロヘビ(アルビノ)は、アオダイショウ以外のヘビでも見られます。シマヘビやヤマカガシ、ニホンマムシやジムグリなど、多種のヘビでもまれに発見され、話題になります。
ヘビのアルビノが、他の爬虫類、例えばトカゲ類などに比べて野生でアルビノがよく見つかるのは、ヘビはトカゲなどに比べて陰性の生き物だからでは、と推測されています。
トカゲは紫外線を浴びないと病気になってしまいますが、ヘビは紫外線をほとんど浴びなくても問題なく、また体温を温める際に日光浴はするものの、トカゲほど多くはしません。
そしてヘビは隠れていることが多い。なので、野外では目立ちやすく敵に捕食されやすいアルビノ個体が生き残る確率が高いからではないか、という推測です。また、紫外線が透過しやすい白色のアルビノ個体は、紫外線による害を受けやすいですが、ヘビの陰性の性質は、その点でも有利に働いているのかもしれません。
アルビノ個体が生き残りやすい、つまり成熟して子孫を残しやすいということで、アルビノ遺伝子をより野外に残しやすいのではないか?ということです。
岩国のシロヘビ
山口県岩国市のアルビノ個体群(白蛇)は、国の天然記念物に指定されています。幕末頃、白い個体だけを神の使いとして駆除せずに保護したため、白い個体ばかりになった、と考えられています。
大正13年に国の天然記念物に指定されました。
明治神宮にシロヘビが現れた?
最近、明治神宮で「シロヘビが出た!」「白いアオダイショウか?!」なんてことが話題になりましたが、あれはテキサスラットスネークのリューシスティック(白変種)であり、黒い色素が抜けて生じたアルビノとは違います。テキサスラットスネークのリューシスティックは、本当にきれいな純白で、本家?アオダイショウの白ヘビよりも、より「シロヘビらしい」姿といえます。
しかしテキサスラットスネークは日本の蛇ではなく、もし日本に定着すれば外来種となる生き物です。そうでなくても、外国産の種類が日本の自然に放たれると、日本在来の生き物に未知の病気をもたらしかねない存在となります。ネット上では「金運アップ」「ありがたや」的なコメントがあふれていましたが、まったくありがたくない事件ですので、そのことは皆が知っておくべきだと思います。
アオダイショウは縁起の良い「家の守り神」
アオダイショウと金運との関係
「白蛇」は金運の象徴だったり、ヘビの抜け殻を財布に入れておくと良い、など、ヘビには金運にまつわる縁起の良い言い伝えが多くあります。
これは、インドの神様「サラスバティ」が、もともとヘビの化身であるところからきている、という説があります。
サラスバティは七福神の「弁財天(弁天様)」の元になった神様です。弁財天は「財」の名の通り、財産をつかさどる神様。蛇が金運の象徴になったのは、このことが由来だと考えられています。
そんな金運の象徴であるヘビの中でも、特にアオダイショウは縁起が良いイメージがあります。農家にとっては財産である米を、ネズミから守ってくれる生き物だからです。
アオダイショウは飼える?
餌食いもよく飼育しやすいヘビ
アオダイショウは非常にえさ食いもよく、飼いやすいヘビです。しかし、大人気のペットスネーク、ボールパイソンほど動きがゆったりとはしていないし、慣れないと臭い臭い「アオダイ臭」をかけられたりもします。
しかし日本産の蛇なので冬眠させれば保温器具などがいらないし、冬眠させずに保温する場合でも、熱帯産のヘビほど気を使わなくて良いです。
エサの冷凍マウスを提供できるかが最大の難関ですが、ほぼこれだけを与えていて問題無い上、爬虫類飼育者の頭を悩ます「拒食」をしにくいので、付き合いやすいヘビといえましょう。慣れていない個体であっても、ピンセットからエサをすぐに食べます。野外から採集してすぐの個体でも、ピンセットや割りばしからエサを食うほど、非常にえさ食いの良いヘビです。
餌をあげようとすると寄ってきて、ピンセットから与えるマウスをほおばる姿はなんともかわいらしいものです。
拒食
そんなアオダイショウも、拒食することはあります。筆者の飼育個体も突然、食べなくなったことがありました。季節的な要因が大きい(冬眠させずに保温すると餌を食べなくなる時期がある)のですが、他にも原因不明のストレスなどが引き金になることもあります。
筆者の経験として、餌をマウスではなくウズラのヒナをあげてみたら、その後、バクバク食べるようになった、というものがあります。
最初ウズラのヒナを与え、次にウズラのヒナとマウスを一緒の袋に入れて解凍しマウスにウズラのにおいをつけて、徐々にマウスのみに切り替えていく、といった感じで食欲復活しました。ひとつの事例として、参考になれば幸いです。
アオダイショウを捕まえるには?
アオダイショウに噛まれると大変痛いです。アオダイショウは鳥や哺乳類など、ヘビからしたら活発でツメや牙、くちばしなどの凶器を持つ動物をエサにするため、カエルや魚など無抵抗な動物を食べるヘビと比べるとパワーがあります。
巻きつくちからももちろん強いのですが、噛む力もその体の大きさと相まって非常に強いです。筆者も噛まれてしまったときは血が噴き出てなかなかとまりませんでした。
しかし食いちぎるようなことはなく無毒なので、そこまで怖がる必要はありません。
アオダイショウの持ち方
上の写真のアオダイショウは、野外で捕まえたアオダイショウです。下から支えるようにしてやり、体の3分の2くらいを手で支えてやるようなかたちにすると、アオダイショウは落ち着きます。無理やり首根っこをつかまなくても、このように扱うことができるのです(個体・種類によります)
とはいえヘビになれていない人は、いきなり大きなあばれ狂うアオダイショウをやさしく抱きかかえるというのは難しいでしょうから、以下のような道具を用意しましょう。
手袋
ヘビの捕獲には必需品です。ただヘビを捕まえてから装着すると、ヘビを固定しながら手袋をはめるのが大変なので、利き腕の反対側は常に厚手の手袋をはめていると良いです。
上のようなタイプの皮手袋を筆者はいつも使っています。なるべく洗っても大丈夫なものにしましょう。捕獲するときには水や泥に手を突っ込んだりすることも多いし、臭い液をかけられたりするからです。
ニトリルモデルの手袋は、刺し傷に強いため、アオダイショウに噛まれても歯が通りません。前述の皮手袋以上に水で容易に洗えるので、湿地や田んぼの場合は、こちらのタイプも所持します。難点は、皮よりもさらに蒸れやすいところ。
注意点としては、間違えてマムシを触らないようにすることです。マムシは毒牙が長いので、これらの手袋も貫通してしまうからです。アオダイショウの子供とマムシはよく似ているので、十分に気を付けましょう。
スネークフックを使ってアオダイショウを捕まえてみよう
スネークフックとは、ヘビを捕獲したり、ヘビを移動する際に使う先の曲がった棒のことです。
この先をつかって、ヘビの頭をおさえつけたりすることもできます。頭をおさえてしまえばヘビは動けないので、首をつかんでしまうことができます。
無毒なアオダイショウの場合スネークフックは必須ではないものの、素手での扱いは怖いという方や、写真を撮るためなどに逃げないでおいてもらいたい場合など、あれば何かと便利です。
上のスネークフックはスタンダードなタイプで、折り畳みしないタイプです。強度があるので、ヘビだけでなく、ヘビ探しの際に軽い石や板をひっくり返すのに使ったり、藪をつついてみたりと使い道は多いです。ただかさばるので、バッグなどに収納しづらいのは欠点です。
こちらの折り畳み式のスネークフックは、収納には便利ですが強度はいまいちです。重いヘビには向かないですね。
ただ、ヘビ採集以外にも目的のある人(写真撮影など)の場合、手がふさがってしまうことが多く、折り畳み収納できる方が便利な場合も多いです。
アオダイショウを入れる袋(洗濯ネット)
百均で売っている洗濯ネットで十分です。通気性が良いのでヘビの運搬には優れています。アオダイショウなどのヘビはパワフルですが、食いちぎるような牙はなく、手が無いので引きちぎることもできず、しっかりとジッパーがしまる洗濯ネットに入れれば、逃げられる心配はありません。
ただし、ネットごしに噛まれる可能性はあるので注意しましょう。経験上、捕獲時に気の荒い個体であってもネットに入れられると、あまりかみつこうとしなくなると思います(必死でネットを伸ばして逃げようとします)。
筆者は、手ぬぐいを組み合わて作った布袋を使っています。この方がヘビも落ち着きますし、糞尿をした際に洗濯ネットのように回りを汚さないからです。
おすすめ書籍
日本産爬虫類の書籍はいくつかあるのですが、まずはこの本が良いでしょう。
2019年9月発行の新しい知見のつまった良書です。2007年に出て、内容的には面白かったのですが、いろいろと誤った場所などがあり、12年の時を経て、改訂されました。
白バックの綺麗な写真や分布図が大変わかりやすいのと、著者はライターとして活躍もされているため、文章が学術性と親しみやすさがブレンドした、大変読みやすいものとなっています。
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