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アカマタのすんでいるところ
アカマタは、奄美諸島と沖縄本島やその周辺の島にすむヘビです。
日本固有種で、世界自然遺産に登録された「奄美大島・徳之島・沖縄北部やんばる」の地域ではよく見かける、代表的な爬虫類のひとつです。沖縄でも、西表島や石垣島、宮古島などにはアカマタはいません。
巨大なヘビ、アカマタ
アカマタは大きな個体では全長2mを超えることもある大型のヘビで、大型の毒蛇ハブとともに生態系の頂点に君臨する生き物です。
アカマタは、オオカミヘビ属(Lycodon属)というグループに属するヘビですが、同じオオカミヘビ属の他種と大きさを比べてずっと大きいです。
日本産のオオカミヘビ属の大きさと比べてみましょう。
日本本土にすむシロマダラは全長70㎝程、先島諸島(西表島や石垣島、宮古島など)にすむサキシマバイカダは全長70cm程、同じく先島諸島にすむサキシママダラは全長100㎝程、対馬にすむアカマダラは全長100cm程です。
全長200㎝にもなるアカマタだけ、ずばぬけて大きいことがわかります。
アカマタが大きく進化した2つの理由
アカマタが近縁種と比べてずっと大きい理由として、ふたつ理由が考えられます。
ひとつめの理由は「本来生態系の頂点に君臨するはずの肉食性哺乳類が、アカマタのすむ奄美群島・沖縄諸島にはいないので、その生態的地位を占めるため」という理由です。
日本本土はタヌキやキツネ、イタチやテンなど、小動物を捕食する肉食哺乳類が生息しています。西表島にはイリオモテヤマネコがいますし、西表島に近い石垣島や宮古島にも、かつてはヤマネコ類がいたたことが化石からわかっています。
大陸から早く切り離され、これらの肉食性哺乳類がいなかった奄美・沖縄諸島において、その生態的地位に入り込むように大型化したオオカミヘビ属の一種がアカマタになった、ということです。
ちなみに奄美・沖縄のハブも同じ理由で大型化しています。先島諸島や東南アジアにいるハブに比べて、奄美・沖縄のハブは圧倒的に大型となっています。
そして、もうひとつのアカマタ大型化の理由として「アカマタの生息する奄美群島・沖縄諸島には大型の無毒蛇・ナメラ属(アオダイショウやスジオ類)のような、ヘビにとっては大型の獲物である鳥獣を捕食するヘビがいないことも考えられています。
日本とその周辺地域には、鳥獣殺しのスペシャリスト・ナメラ属のヘビがいます。
ナメラ属のヘビとは、北海道・本州・四国・九州のアオダイショウ、先島諸島(石垣・宮古・西表・与那国)のサキシマスジオやヨナグニシュウダ、朝鮮半島のチョウセンナメラ…などのヘビたちのことです。
そしてこれらのナメラ属のヘビのいる地域では、オオカミヘビ属は小型~中型です。
ナメラ属は「鳥獣を絞め殺すスキル」「ヘビにとって大型の獲物である鳥獣をよく伸びる鱗で丸のみするスキル」に関して、オオカミヘビ属より優れています。
なのでオオカミヘビ属は、ナメラ属のいる地域では、鳥獣食の大型蛇の座はナメラ属に譲り、細長くて食べやすい爬虫類、または爬虫類や両生類を中心に色々なものを食べるような小型~中型の立ち位置のヘビとして、うまく立ち回っているのです。
そしてナメラ属のいない奄美群島・沖縄諸島では、他の地域ではナメラ属が君臨している大型蛇の生態的地位を兼任すべく、アカマタは大型化したわけです。
アカマタの食べ物
アカマタの属するオオカミヘビ属は、アオダイショウなどナメラ属に比べて体鱗列数(胴回りのうろこの数)が少ないため、その部、獲物を呑んだ時に鱗と鱗の間にある皮膚が伸びにくく、トカゲやヘビなど細長い爬虫類を餌として好む種が多いのですが、アカマタは、あらゆる生き物を食べ、ヘビやトカゲを中心に、カエルや、小鳥・ネズミまで、何でも食べてしまいます。
体を大型化させることで、オオカミヘビ属が本来食べるのが苦手な太い獲物も呑み込めるよう進化したのです。
ただ、やはりヘビやトカゲを最も好むようです。
ハブをも食べるアカマタ
アカマタはハブの天敵、などと言われることがあります。アカマタは、あの恐ろしい毒蛇であるハブを食べてしまいます。
なのでアカマタは、地域によってはありがたがられることもあります。しかしアカマタの方が小さいと、逆にアカマタがハブに食べられてしまうこともあります。
もし同じサイズだったらどちらが強いでしょうか。アカマタはハブ毒に対する耐性があるので、パワーで勝るアカマタの方が有利であるのでは、と予想できます。また、アカマタはあらゆる種類の生き物をエサにしますが、爬虫類を特に好むので、ハブがアカマタをエサにする以上に、アカマタの方がよりハブを積極的にエサにする可能性はありそうです。
アカマタに毒はある?
アカマタは、写真からもわかるように赤と黒のハデな色合いをしています。派手な生き物は警戒色で毒がある!と思われがちですが、アカマタに毒はありません。
ただし、気が荒く攻撃的な個体が多く、大型個体に噛まれるとそれなりのダメージを受けるので気を付けるに越したことはありません。また、つかむと非常に臭い液をかけられます。この毒自体に特段害があるわけではありませんが、生臭い、独特な悪臭です。
アカマタは夜行性
アカマタは、奄美・沖縄の分布域にて、最もよく出会うヘビです。夜行性なので、夜に出没します。
夜には、林の中でも出会いますし、道路にもよく出てきます。雨上がりなど条件の良い日では一晩で何十匹ものアカマタに出会います。奄美沖縄では、出会う蛇の大半がアカマタということが少なくありません。
分類 爬虫網 有隣目 ナミヘビ科 オオカミヘビ属
学名 Lycodon semicarinatus
大きさ 80~170cm(最大200cm)
分布 奄美諸島・沖縄諸島
すみか 人家付近から山奥まで幅広い
食べ物 ヘビ、トカゲ、ネズミ、鳥、カエル、魚など