タガメの生息地と採集について

タガメ

北関東のとある地域にて、タガメの生息地を発見しました。

地形図アプリ、Googleマップの航空写真、そして長年の自然観察により得たカンを頼りに。

今回発見したタガメ生息地は、網ですくうたびにタガメが網に入っているというような、それはもう夢のような湿地帯でした。

僕の生き物仲間には各分野の生き物に詳しい人がいるものの、水生昆虫に詳しい人がいないので、水生昆虫の生息地は自力で探すしかありません。

しかし、自分の力でタガメ生息地を探し出してタガメを捕まえた感動は、人からポイントを教えてもらうよりも何倍も大きいものです。

本記事では、そんな僕の経験をもとに、タガメ生息地の探し方や採集の方法をお伝えします。

絶滅危惧種、タガメ

タガメ幼虫
タガメの幼虫

環境省レッドリスト 絶滅危惧Ⅱ類

現在では、野外でめったに見ることのできないタガメですが、1950年代までは日本全国で普通に見られました。

しかし、高度経済成長期以降、タガメの生息にとって致命的となる農薬や照明が増加し、さらに外来種の影響、ペット需要による乱獲の影響も加わり、タガメの生息域は激減してしまいました。

現在、タガメはなかなか野外で見られない昆虫となり、「環境省レッドリスト 絶滅危惧Ⅱ類」にランクされるほどの希少生物になってしまいました。

個人的な採集・飼育は可能

2020年2月、タガメは「種の保存法」における「特定第二種」に指定されました。

この法律より、販売・頒布目的の陳列・広告、譲渡、捕獲・採取、殺傷・損傷、輸出入等が原則として禁止となりました。

ただし、個人的に採集し、個人の趣味として飼育することは可能です。

タガメを生息地を見つけるには?

タガメが生息する環境を地図から割り出す

タガメは希少な昆虫なので、生息地の情報は書籍やインターネットでピンポイントで出ていません。しかし、ネットや水生昆虫の本で少し調べれば、都道府県レベルまではわかるので、タガメのおおまかな生息地域は予想できます。

そして、都道府県レベルからさらに絞り込み、グーグルマップの航空写真や国土地理院の地形図を使って田んぼや水辺を探し、タガメのいそうな環境を割り出します。

僕が使っている地形図は、こちらのスーパー地形。

http://www.kashmir3d.com/online/superdemapp/

また、GoogleEarthも立体的に見ることができ、便利です。これらのマップを駆使して、タガメのいそうな環境のアタリをつけていきます。

タガメのいそうな環境とは、以下のような条件の水域です。

  • 丘陵・低山地の棚田とその周辺の溜池(上流域で農薬が流れ込みにくい)
  • ゴルフ場や街が近くにない(除草剤や人工照明の影響が少ない)

現地でタガメがいそうな環境を探す

しかし、地図を見るだけで生息地を見つけるのは非常に困難です。地図で良さげな水域を見つけたら、現地で調べていく必要があります。

参考までに、僕が見つけたタガメ生息地の特徴を挙げておきます。

  • 水深が浅く流れの無いまたは少ない水辺(タガメは田んぼやその水路、掘り上げなど、推進数十センチの、浅くて流れの無い水域にいます)
  • コンクリート張りではない水草のある水域(水草がない水路にはタガメはいない)
  • 水生昆虫やカエルが大量にいる(カエル、ガムシ、クロゲンゴロウ、シマゲンゴロウ、タイコウチ、コオイムシがおり、生物多様性レベルが高く、田んぼの生態系の頂点たるタガメがいる可能性が高い)
  • 外来種アメリカザリガニやウシガエルが少ない(これら外来種に占拠されているような水域は望みが薄い。ただしアメリカザリガニのいる水域でタガメが大量に獲れたこともあった)

採集道具

たも網

形状は好みにもよりますが、丸い網より、先がまっすぐのタイプの網が個人的には使いやすいと思います。

水底に平らな網の先を押し付けて生き物の逃げ道を少なくしたり、草を押したりかき分けたりできるので有利です。ただ、タガメの採集では丸網でも特に問題はないです。

高級なものでなくても、ホームセンター等で安く売っているもので十分です。

たも網の使い方。「すくう」よりも「追い込む」

池や田んぼの水路に網をつっこんで水棲動物捕獲法、通称「ガサガサ」。

水路などの水草の近くに網を入れ、水草を足や棒などでガサガサとやり、水草にいる生き物たちを網の方に追い込むのです。網自体でガサガサをやっても獲れないことはないですが、網とは逆方向に泳いで逃げていくことが多く、タガメが獲れる確率が下がります。

コツは、「すくう」のではなく「追い込む」こと。

筆者の場合は2本の網を使う「二刀流」で挑んでいます。片方の網で、もう片方の網に追い込んでいます。

長靴

膝くらいまで水を防げれば、どんなものでもOK。筆者は、日本の野鳥の会の長靴を使っています。やわらかいのでくるくる丸めてコンパクトにできますし、水に入らない時はショートブーツのようにして蒸れをふせぐことができます。

プラケース(ヒモ付きの小さいタイプ・大きめのタイプ)

普通のプラケースでもよいのですが、網で救った生き物を、わざわざプラケースのおいてある陸まで運ぶのがかなり大変なので、ヒモ付きで肩にかけられる小型のケースがあると便利です。捕まえたら、ショルダーバッグの感覚で、虫を入れることができます。

それとは別に、運搬するための大きめのプラケースは「母艦」として陸に置いておきます。捕まえた生き物は一時的にヒモ付きプラケに入れて、後で母艦のプラケースに移し替えると良いでしょう。

採集・持ち帰りの際の注意

ケースなどに入れて持ち帰る際は、水をあまり多く入れすぎず、またタガメがつかまるための草や枝を入れてあげましょう。タガメは尻の先にある呼吸管で空気を吸っているので、ここが水につかったままになると死んでしまいます。

また、ケースの置き場所に気をつけましょう。採集中は直射日光に当てないように。持ち帰りの際は、車を停めた時に車の中に入れておかないようにしましょう。夏場などは一瞬で死んでしまいます。

タガメは「種の保存法」で保護されている昆虫ですが、個人が趣味のために採集・飼育することは可能です。とはいえ、局所的に分布している絶滅危惧種ですから、持ち帰る場合はその辺りをよく考えましょう。

また、タガメのいる水域が採集禁止かどうかの確認、禁止されていなくても所有者に許可を得ないとならない場合もあります。

タガメを採集した際に、生息域を荒らさないようにしましょう。荒らすと、その場所が採集禁止になってしまうこともあります。

これらのことに気を付けて、タガメ採集を楽しみましょう!