ヒラズゲンセイ

ヒラズゲンセイ

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幻の赤いクワガタ?

ヒラズゲンセイは、その大きな大あごを持つ姿から「幻の赤いクワガタ」と呼ばれたりしますが、実際にはクワガタからは縁が遠い、ツチハンミョウ科の昆虫です。

「ツチハンミョウということは、ハンミョウに近い仲間なのかな?」

と思いきや、これまた違いまして、ハンミョウからも縁遠いグループに属します。

ヒラズゲンセイの属するツチハンミョウの仲間は

昆虫綱 コウチュウ目 ゴミムシダマシ上科 ツチハンミョウ科

に分類されます。

※ちなみにクワガタの仲間は
昆虫綱 コウチュウ目 コガネムシ上科 クワガタムシ科 に分類されます。

ヒラズゲンセイなどツチハンミョウ科が属する「ゴミムシダマシ上科」に属する他の昆虫の種類は、

ゴミムシダマシをはじめ、カミキリモドキ、アリモドキ、キノコムシダマシ

・・・などがいます。

人間によって、他のメジャーな昆虫に似ているけど違うという理由でモドキだのダマシだのと名付けられてしまったあわれな?種名が多いグループです。

ヒラズゲンセイは、一般の人にあまり知られていない虫たちのグループに属している、謎の昆虫なのです。

すみかと生態

ヒラズゲンセイは四国、九州、奄美諸島、沖縄諸島、東南アジアに分布している南方系の昆虫で、以前は本州にはいないとされていましたが、近年西日本でも確認されるようになってきました。

生息環境は、平地・丘陵。主に広葉樹林周辺で見られますが、民家に近い場所でも見られることがあります。

発生時期は5~8月。6月~7月中旬ごろまでが活動の最盛期です。

大顎、触角、脚は黒色で、オスは頭部と大あごが大きいのが特徴。メスは大あごも頭も小さいです。オスの大あごは、オス同士のけんかのために使います(冒頭の写真はオスです)。

体長は18~30mmほどです。

毒・危険性

触るとトウガラシ臭のする黄色い体液を分泌し、その体液にはカンタリジンという有毒物質が含まれ、皮膚に付くと炎症を起こすことがあります。

とはいえ、触らなければ、ヒラズゲンセイの方から人間に襲ってくるということはありませんし、特に危険な昆虫ではありません。毒を飛ばしたりすることもなく、触ると、防御のために体液を分泌する、というものです。

万が一触ってしまった場合は、水で洗い流し、また皮膚の弱い人などは反応が強く出る場合がありますので、皮膚科を受診するなどしましょう。

その赤くて奇妙な姿や毒のイメージから、マスコミでも毒を強調して報道したり、またヒラズゲンセイが発生すると駆除しようとする動きもたまに見られますが、ヒラズゲンセイは鹿児島県・高知県・徳島県では準絶滅危惧種に指定されている希少な虫でもあり、むやみに駆除すべきではないでしょう。

また、その大アゴは、見るからに噛まれたらヤバそうな凶悪さを感じますが、アゴの力はクワガタのような強力なものではなく、危険性は無いといって良いでしょう。

餌・飼育

なんと、ヒラズゲンセイは成虫になってからは餌を食べずに、ただ繁殖するのみです。ホタルなどと同じですね。

幼虫は、クマバチの巣に寄生して育つという不思議な生活史を送り、クマバチの集めた花粉団子やクマバチの卵を食べて成長します。

ヒラズゲンセイは、その派手で迫力ある見た目から飼育してみたい人もいるかもしれませんが、成虫は餌を食べないので、飼育というより、力尽きるまでプラケースでストックするような形になってしまうかもしれません。

希少な昆虫ということもあり、自然の中でそっと観察するのが良いでしょう。