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外見
日本で一番美しいカエルと言われ、背中は明るく濃い緑色で、この地色に金紫色の斑紋を持つという、非常に鮮やかな体色・模様をしていますが、苔の上にいると目立たず、効果的な隠ぺい色となっています。
アマミイシカワガエルのすみか
山地性で、森林内の渓流周辺に棲息しています。特に、起伏の激しい場所や滝の周辺などでよく見られるカエルです。繁殖期には道路に出てきたりすることもあります。
アマミイシカワガエルに出会うには、繁殖期の4~6月がねらい目ですが、どの時期でも出会うことはできます。個体数が多くはないので、簡単には見つけられませんが、雨が降った後など夜間の道路上に出ていたり、また山の中の公衆便所の中にいる、なんてこともあり、決して幻のカエルではありません。
写真の個体は、6月末、午後11時頃、奄美大島(鹿児島県大和村)・住用川の支流で出会いました。
渓流沿いの林道を歩き、渓流の大岩に向けてライトを照らすと、数10メートル先に反射して光る生き物の目を発見。
少しづつ近づいていくと、徐々にカエルであることがわかり、鮮やかな緑色のボディを確認し、アマミイシカワガエルに違いない、と確信しました。
このアマミイシカワガエルは、大きな岩の目立つ場所に鎮座していました。近づいても逃げようとせず、写真のような体勢の後、さらに近づくと、体を平たくして身を守る体勢をとりました。
繁殖
繁殖期は4月~6月で、オスは穴から少し離れた小高い場所でメスを待ちます。
そして、沢沿いの岩の割れ目や穴の中の水たまりに750~1500個の卵を産みます。
孵化した幼生(オタマジャクシ)は、自力または雨が降り水があふれだすのを利用して、沢に出ていきます。
2011年、新種記載されたアマミイシカワガエル
かつては沖縄本島・やんばるの渓流に棲息するオキナワイシカワガエル
(Odorrana ishikawae)と同種として扱われていたのですが、人工交雑すると雑種致死または精子形成異常が起こることから、2011年、奄美大島の個体群は新種として記載されました。
オキナワイシカワガエルと比べると、頭がやや小さく、色彩が明るいのが特徴です。また、皮膚隆起が小さく鋭く、その周囲の顆粒も密です。模様や声、繁殖方法にも明らかな違いがあります。
「イシカワ」命名の由来
アマミイシカワガエルの「イシカワ」は、動物学者・石川千代松(1860~1935)に献名されたものです。
命名者は、アメリカ合衆国国立博物館の爬虫両生類学者 レオナルド・シュタイネガー(Leonhard Hess Stejneger 1851~1943)。
同じく沖縄本島に棲むナミエガエルやハナサキガエルも、シュタイネガー博士による命名で、それぞれ動物学者の波江元吉(ナミエガエル)、飯島魁(イイジマガエル=現ハナサキガエル)への献名です。
ちなみにシュタイネガー博士は、日本の爬虫両生類研究の出発点となった名著として語り継がれている「日本とその周辺に地域の両生爬虫類(1907・明治40年)」を著した人物です。
保護について
アマミイシカワガエルは、いくつもの法や条例で、採取等が禁止されています。以下の法・条令以外に加え、自治体の条例もありとても複雑です。
とにかくアマミイシカワガエルを見つけたら、触らずにそっと観察し、写真に収めるだけにしておきましょう。
「国内希少野生動植物種」(絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律:種の保存法)
販売・頒布目的の陳列・広告、譲渡し、捕獲・採取、殺傷・損傷、輸出入等が原則として禁止されています(罰則:最高で懲役1年以下又は100万円以下の罰金)
「鹿児島県指定希少野生動植物」 (鹿児島県希少野生動植物の保護に関する条例)
捕獲・採取、殺傷、損傷が禁止されるほか、違法に捕獲等された指定希少野生動植物の所持、譲り渡し、譲り受けが禁止されています(罰則:最高で1年以下の懲役または50万円以下の罰金)
「鹿児島県指定天然記念物」(鹿児島市文化財保護条例)
損壊、廃棄、隠とくが禁止されています(罰則:3万円以下の罰金又は科料)
アマミイシカワガエルに会いに行こう!
アマミイシカワガエルは、美しい上に体が大きく、特にメスの大型個体は迫力満点で、一見の価値あり!
奄美大島はハブの個体数も多く、夜の山歩きはちょっと怖いですが、この日本一美しい大型ガエルに出会いに、奄美大島に出かけてみてはいかがでしょうか?
前項の通り、法律・条令で何重にも厳しく保護されている生き物ですので、法やマナーを守って、正しく観察しましょう。くれぐれも捕獲して飼おうなんてことを考えないように!
和名 アマミイシカワガエル
分類 両生網 無尾目 アカガエル科
学名 Odorrana splendida
頭胴長 7~14cm
分布 奄美大島