スズメバチ 日本本土産 全6種類図鑑

このページでは、日本本土に生息するスズメバチ全6種について、大きさや生態、毒、危険性などについて、写真つきで解説しています。

毒の量と危険性については、星の数で5段階中どのレベルなのか、わかりやすく表現しています。文献からの知見に加え、筆者の野外における経験を元に執筆しています。スズメバチを調べる際にご活用ください。

オオスズメバチ

大きさ 
女王バチ40〜44mm 
働きバチ26〜38mm 
雄バチ27〜40mm

攻撃性 ★★★★★

毒の量 ★★★★★

世界最大のスズメバチ。攻撃性、毒の量いずれもスズメバチ類で最強。

体が大きく大あごが強力で、主に大型昆虫を中心に狩り、羽の硬い甲虫や反撃力の高いカマキリをも餌にする。

ただし、大型でパワー型のハンターであるため、動きの素早い昆虫を捉えるのは、他のスズメバチ種に比べやや苦手である。

餌対象の昆虫の量が減ってくる秋には、他種のスズメバチやミツバチの巣をよく襲い、その成虫・幼虫を自らの幼虫の餌とする。

時には獲物のハチの巣を全滅させることもある。その意味で、人間にとって非常に危険なハチであると同時に、他種スズメバチの増えすぎを抑制する役割も担っているともいえる。

巣は、樹洞や地中の空洞に作るため、郊外や田舎など自然の豊かな地域に多く、都市部では数が少ない。

そのため、より都市により適応しているキイロスズメバチほど被害数は多くない。ただし巣が樹洞や地中にあるため、気づかずに近づいてしまい猛攻を受けてしまうことがある。

キイロスズメバチ 

大きさ 
女王バチ26mm 
働きバチ17〜24mm 
雄バチ20〜23mm

攻撃性 ★★★★★

毒の量 ★★★★☆

体は他のスズメバチに比べると小さめだが、オオスズメバチに匹敵する攻撃性を持つことに加え、オオスズメバチと比べて人間の生活圏によく巣を作る。

このことから、スズメバチの中で人への被害が最も多い。近年になって特に都市部で急激に増えてきた。

餌は昆虫やクモ、動物の死体などあらゆるものを捕食するゼネラリスト。

日本のスズメバチ属で営巣期間が最も長く、営巣規模も大きい。育房数は、時に10000房を超え、日本本土のスズメバチとしては最大。一つの巣から女王が1000匹も発生することがある。

また、巣をどこにでも作るのもキイロスズメバチの特徴。

例えばコガタスズメバチは軒下などの開放空間、オオスズメバチやヒメスズメバチは樹洞などの遮蔽空間に巣を作るが、キイロスズメバチは開放空間・遮蔽空間のどちらにも巣を作ってしまう。

軒下から樹洞、段ボールの中や廃材の下、壁の中など、自然でも人家周辺でも、どこにでも巣を作る。

食性の広さに加え、どこにでも巣を作る習性が、都市に適応しやすい理由であり、同時に人間への被害が多い理由でもある。

コガタスズメバチ

大きさ 
女王バチ25〜29mm 
働きバチ21〜27mm 
雄バチ22〜25mm

攻撃性 ★★★★☆

毒の量 ★★★☆☆

名前は「コガタ」だが、オオスズメバチと比べたら小さいだけで、他のスズメバチと比べて特別小さいわけではない。キイロスズメバチよりも大きい。

外見はオオスズメバチそっくりで、コガタスズメバチの大型個体とオオスズメバチの小型個体はぱっと見ただけでは区別がつかないが、顔の特徴や背中の紋の色で区別できる。

住宅地や都市部によく適応しているハチだが、近年、都市部ではキイロスズメバチの方が目立つようになってきている。

巣は開放空間に作り、よく庭木に作る。そのためキイロスズメバチと並んで人への被害が多いハチである。

モンスズメバチ

モンスズメバチ

大きさ 
女王バチ25〜27mm 
働きバチ19〜24mm 
雄バチ22〜25mm

攻撃性 ★★★★☆

毒の量 ★★★★☆

狩り対象の大半がセミ。セミ狩りのスペシャリスト。しかし、大型のバッタやトンボを狩ることもある。

多くのスズメバチは夕方薄暗くなると活動を止めるのに対し、モンスズメバチは半夜行性で日没後も活動している。

そのため、夜の樹液にも集まっていることがあるのでカブトムシ・クワガタ採集の際には気をつけたい種。

見た目の特徴は、腹部のシマが波を打ったような形になっているため、他の種のスズメバチとの区別がしやすい。

ヒメスズメバチ

大きさ 
女王バチ32〜35mm 
働きバチ25〜33mm 
雄バチ28〜35mm

攻撃性 ★★☆☆☆

毒の量 ★★☆☆☆

アシナガバチ類の巣を襲いその幼虫や蛹の体液を吸い、それを自分たちの幼虫に与える、アシナガバチ狩り専門ハンター。

営巣期間は、アシナガバチの終齢幼虫・蛹のいる時期に合わせているので、他のスズメバチ類と比べ6月〜9月と短い。

働きバチの数が少なく、攻撃性もスズメバチ属の中では最も低いため、危険性の低い種といえる。しかし、見た目はオオスズメバチに似て大柄で立派だ。

他のスズメバチとの見分け方は、尻の色。ヒメスズメバチは尻が黒く、尻の黄色い他種のスズメバチと区別できる。

チャイロスズメバチ

大きさ 
女王バチ27〜29mm 
働きバチ17〜21mm 
雄バチ19〜24mm

攻撃性 ★★★★★

毒の量 ★★★★☆

チャイロスズメバチの女王は、キイロスズメバチやモンスズメバチの巣に乗り込んで行き、それらの女王を殺し、巣を乗っ取るという不思議な生態をしている。

チャイロスズメバチの女王が産んだ幼虫はキイロやモンの働きバチに世話をさせる。そのため、初期の巣では、チャイロスズメバチと他種のスズメバチが混成しており、やがてチャイロスズメバチのみになってくる。

スズメバチ類にとって一番大変な時期は、冬眠から目覚めた新女王が一匹で巣を作り、卵を産み、エサを獲ってくる時期。

そんな大変な時期を、一から立ち上げて軌道に乗りつつある他種スズメバチの巣をのっとることで乗り切るというのが、チャイロスズメバチの生存戦略なのだ。

チャイロスズメバチは、日本本土のスズメバチの中では出会うことが少ないレア種。一方、攻撃性は非常に高く、巣の近くを通っただけで襲い掛かってくる獰猛なハチである。

日本には、これら日本本土の6種に加え、八重山諸島に生息するツマグロスズメバチ、外来種のツマアカスズメバチがいる。

また、本州・四国•九州に生息するキイロスズメバチは、北海道に生息するケブカスズメバチの亜種である。