ニホンアカガエルとヤマアカガエルの見分け方、声、卵、生息地、繁殖期についての解説
立春の2月4日。天気予報での東京の予想最高気温は18℃。いよいよ本格的な、東京近郊での両生爬虫類目的の自然観察の季節の始まりです。
というわけで、東京都 あきる野市 横沢入に、ヤマアカガエルの観察に行ってきました。
目次(クリックで各項目にとびます)
横沢入
横沢入は、東京最大の里山と言われる、自然の豊かな場所。
かつては放棄された谷戸で、宅地造成でつぶされる危機にあったところを、地元団体や保護団体など、さまざまな人の努力で守られました。
そして現在も都や団体により懸命に維持管理されている、東京の宝ともいうべき里山なのです。
地図上に茶色の太い線が見えますが、この道は、スニーカーでも歩ける整備された遊歩道で、子供連れや散歩でも安心して歩ける道です。
地図の真ん中あたりにある「中央湿地」と、その奥に広がる田園風景は大変美しく、季節ごとにあらゆる姿を見せてくれます。
これらの場所で歩いているだけでも、多種多様な生き物に出会うことができます。
しかし、さらに多くの生き物に遭いたい方は、地図上の山の方に入っていく水色の線、「富田ノ入」「荒田ノ入」などの、谷合に入り組んだ湿地帯に踏みいれてみてください。
このあたりは、まさに生き物の宝庫。特にカエルやサンショウウオなどの両生類を多種類見るためには、これら湿地帯に入っていく必要があります。長靴は必須!
※ただし、横沢入は生き物の採集が禁止されているので、観察のみにしましょう。
ヤマアカガエルの棲む谷戸へ
午後2時、横沢入着。気温は車の気温表示では20度を超えており、汗ばむような陽気。
前日には雨が降っており、降雨の刺激により繁殖に入るヤマアカガエルの観察には、絶好の日和。昨晩には、もうカエルたちが集まって大騒ぎをしていただろう、という予想のもと、谷戸を登っていきます。
谷戸にはいると、遠くからキュンキュンと鳴き声が聞こえます。
これは、間違いなく、ヤマアカガエルの声!ヤマアカガエルの鳴き声と繁殖シーンについては、次の動画をご覧ください。
ヤマアカガエルの繁殖シーンと鳴き声(動画)
2019年2月4日 立春の、あきる野市横沢入でのヤマアカガエルの繁殖シーンです。カエルは主に夜に活動しますが、このように昼でも元気に活動するのです。
オスがメスに抱きつこうとして、間違えてオスに抱きつこうとしてしまい、そしてすぐに離れて、繰り返すうちにやっとメスに抱きつくことができて。しかし今度は別のオスが邪魔に入る…。繁殖行動は、見ていて飽きないです。
爬虫類両生類は、じっとしているか逃げるかで、見ていて飽きてしまう場合が多いですが、繁殖シーンに限っては、とてもアツイのです。
ヤマアカガエルの繁殖は真冬に行われる
ヤマアカガエルは、東京では2月の初旬から中旬がピークとなり、早い年では1月終わりから始まることもあります。
同じ地域でも、日当たりや水の量の違い、高低差で、繁殖開始時期にばらつきがあり、さらにそれも毎年違うので、ヤマアカガエルの繁殖のピークを観察するには、その地域のおおよその時期を狙って、頻繁に繁殖地に通う必要があります。
ヤマアカガエルがわざわざ寒い季節に繁殖する理由
ヤマアカガエルの繁殖期間は、ひとつの産卵場所でほんの数日です。ですから、ヤマアカガエルの繁殖を見たいけど、今日は天気が悪いから…今日は忙しいから…なんていっていると、時期を逃してしまいます。
しかし、なぜヤマアカガエルの繁殖は、なぜこんなに寒い季節に行われるのでしょうか。
それは、他のアカガエル類にも同じことがいえるのですが、理由の一つとして、寒い時期には天敵となるヘビや、幼生の天敵となる水生昆虫がいないため、敵の少ない状況で繁殖および幼生の成長が可能となるから、と言われています。
また、他のカエルの繁殖期とずれるので、ライバルである多種のオタマジャクシとの餌などの競合も避けられる、というのもあるでしょう。
しかしデメリットもあります。この時期は、急に冷え込んでしまう日もあります。
もしそんな時に間違えて出てきてしまったら、親も、せっかく産んだ卵も、寒い日に凍結して死んでしまうようなリスクもあります。アカガエルは、寒さで死ぬリスクを負ってでも、敵を避ける生存戦略を選んだというわけですね。
また、寒さで死ぬリスクを少しでもなくすため、アカガエル類は繁殖期間がとても短いのです。短ければ、繁殖期間に雪が降ったり、気温が急に低下したりするリスクに遭う確率が、少しでも減るからです。
一方で、アマガエルやトノサマガエルなど、夏に繁殖するカエルは、そのようなリスクが無いので、割とダラダラと長い期間、繁殖活動をしています。
アカガエルが寒い季節に繁殖する、本当の理由
しかし実は、アカガエルが寒い季節に繁殖するのは、さらに根本的な理由があります。それは「アカガエルは北方起源のカエルであり、卵の胚が暑さに弱い」ということです。
アカガエル類は、他の種類のカエルと比べて高い水温であると、卵が孵らないことが実験でわかっています。
なので、先ほど書いた「敵のいない時に寒い時期に繁殖する」というのは、あくまで副産物的なもので、そもそもアカガエルは寒冷地適応タイプのカエルなわけです。
例えば沖縄にもリュウキュウアカガエルという南方系の種類がいるのですが、このアカガエルは、平地から低山地で繁殖する本土のアカガエルと比べると、山地の源流部で繁殖します。これは、沖縄の気温が高いため、源流部の冷たい水でないと、卵が高温に耐えられないからです。北方系のカエルが、南の島に棲むことができるように、源流部に棲むように適応したわけです。
ヤマアカガエルが寒い時期に繁殖する理由をまとめると、
「もともとアカガエルは寒冷地起源の種族であるため、寒い時期の繁殖に適していた。さらに、そのことが敵が少ない時期に繁殖するという有利さにも働いた」
といった形で考えるのが自然でしょう。