ヤマカガシの生息地、大きさ、色、模様、毒とヒキガエルとの関係について。飼育はできるのか。

ヤマカガシ
ヤマカガシ

ヤマカガシの基本データ

和 名:ヤマカガシ
分 類:爬虫網 有隣目 ユウダ科 Rhabdophs tigrinus tigrinus
大きさ:全長70~150cm
分 布:本州、四国、九州のほか、佐渡島、隠岐島、壱岐、屋久島、種子島などに分布。
●特定動物

ヤマカガシのくらし

ヤマカガシの「カガシ」とは、古語で「蛇」を意味します。

つまりヤマカガシとは「山に棲む蛇」という意味になるわけです。

しかし実際は、山だけでなく平地でもよく見られます。そして、どの生息地でも、水辺で最もよく見られるヘビです。

しかし、山地のヤマカガシは、平地に比べ大型個体が多く、その威嚇するシーンは、まるでキングコブラのような迫力があります。

このような山に棲む大型個体のインパクトから、ヤマカガシと呼ばれたのかもしれませんね。

大型の毒蛇ヤマカガシ
山地で出会った大型の熟年個体(東京都 9月)

水辺に棲むヤマカガシは、泳ぎがうまく、動きも敏捷です。時には潜水も行います。主に昼間に活動します。

毒蛇ヤマカガシが水田で泳ぐ
水田を泳ぐヤマカガシ

ヤマカガシの食べ物

カエルを好んで食べます。また、潜水してオタマジャクシや魚などの水生動物も食べます。

水辺から離れて大型のヒキガエルを食べることもよくあり、山地のヤマカガシが大きいのは、この影響があるようです。

ヒキガエルは毒があるので他のヘビは敬遠しますが、ヤマカガシはむしろ好んでヒキガエルを捕食します。

ヒキガエルを呑んだヤマカガシ
大型のヒキガエルを呑んだヤマカガシ(東京都 5月)

ヤマカガシの毒の強さ

実は、ヤマカガシの毒は強いのです。誰もが知っている有名な日本の毒蛇3種で毒の強さランキングで比較してみると、以下のようになります。

  • 第1位:ヤマカガシ LD50=5.3 (mg/kg)
  • 第2位:マムシ LD50=16 (mg/kg)
  • 第3位:ハブ LD50=54 (mg/kg)

これは意外な結果ですね。最も人を死に至らしめて、現地でも非常に恐れられているハブが、一滴の毒の強さとしては一番弱く、かつて毒蛇とも思われていなかったヤマカガシが一番強いというのは。

LD50(半数致死量とは)

毒の強さの基準の単位「LD50」は、「半数致死量」と言います。

半数致死量とは、毒をマウスなどの実験動物に投与した場合に、その実験動物の半数が試験期間内に死亡する用量のことで、投与した動物の50%が死亡する用量を体重当たりの量(mg/kg)としてあらわしたものです。

ヤマカガシが日本で一番危険な毒蛇なのか?

ヤマカガシ 毒蛇
(ヤマカガシ 東京都奥多摩町 5月)

では、ヤマカガシが一番危険な毒蛇なのかというと、そうではありません。

毒蛇の危険性は、一滴の毒成分の強さだけでなく、一度に毒を注入する量や、そのヘビの攻撃性など、あらゆる要素を考えなくてはなりません。

ヤマカガシの毒注入は非効率

例えば、ハブやマムシはクサリヘビ科に属し、この仲間の毒牙は、「管牙」といい、注射針のような構造になっており、噛んだ瞬間、毒が素早く効率的に、大量に注入されます。

一方のヤマカガシは、上あごの奥の牙が毒牙として働き、その付け根にあるデュベルノイ腺という毒腺からにじみでた分泌液が、噛まれた相手の傷口に入り込む、という毒注入スタイルです。

つまり、せっかく強いヤマカガシの毒も、まず奥歯にあるため、深く噛まないとなかなか毒が入らないのです。

またせっかく分泌された毒も、牙から直接出るのではなく、牙の根本にある唾液腺である毒腺からにじみ出るので、毒が入るまで時間がかかり、さらに分泌された毒の漏れが多く、出した毒のすべてが相手の体に入らないわけです。

ヤマカガシは本来、おとなしいヘビ

それ以前に、ヤマカガシ自体がおとなしいヘビなので、ヤマカガシ側からわざわざ人間を噛んでくることはなく、捕まえられた時などに噛むだけです。

だから、ヤマカガシをこちらからもったりいじめたりしなければ、ヤマカガシの方からわざわざ噛んでくるということはほぼ無いのです。ヤマカガシのいる草むらを知らずに通ってしまったとしても、ほとんどの場合、ヤマカガシは足音に察知して、自分から逃げていくでしょう。

ヤマカガシの咬症例(咬まれた例)

1972年と1984年に中学生がヤマカガシに噛まれて死亡するという痛ましい事故がありました。

近年話題になった例としては、2017年7月29日、兵庫県伊丹市の若松公園で小学5年生(10歳)の男子児童が手首を噛まれ、一時意識不明の重体となる事故がありました。

幸い、翌日30日には意識が回復し、命に別状はありませんでした。

この事故の際には、男児の友人が、噛んだヘビをリュックに入れて、被害男児のお母さんに渡すという見事な対応をしています。おかげで、ヘビの種類が「ヤマカガシである」と特定できたのが、血清治療の対処に役立ったと思います。

ヤマカガシはヒキガエルを食べて毒を得る!

ヤマカガシの首のうなじにあたる部分の皮膚の下には、頸腺という毒腺があり、毒牙とはまた別の、第二の毒となります。

これは、防御用の毒で、強く刺激すると毒が染み出し、飛び散ることもあります。これが目に入ると、目に障害が起こります。

実は、頸腺の毒はブフォトキシンと言って、ヤマカガシの大好物であるヒキガエルの毒です。なんと、ヤマカガシはヒキガエルを食べることで、その毒を体内に吸収し、頸腺にため込んでいるのです。

外敵に首を噛まれたり押さえつけられた時などに防御するために、ヒキガエルの毒に利用しているわけですね。

ヒキガエルの毒能力を、ヒキガエルを食べることで、ヤマカガシが能力コピーしてしまうなんて、まるでアニメやゲームの話のようですね。

ヒキガエルを食べないと第二の毒は無いが…

ちなみに、ヒキガエルが生息していない地域では、ヤマカガシは頸腺の毒がありません。

しかし、ヒキガエルが周囲にいない環境であると、ヤマカガシはわざわざヒキガエルを捕食するために遠征するような行動も見られるようで、本能的にこの「第2の武器」を得ることを求めているのではないかと思われます。

ヤマカガシの血清

ヤマカガシの血清を開発したのは、日本蛇族学術研究所(通称:へび研)。ヤマカガシに噛まれたら、病院に行くことになりますが、必ずここに相談することになります。なぜならヤマカガシの血清は、ここにしか置いてないからです。

ヤマカガシの血清は、1989年の中学生の死亡事故の際、遺族の寄付金、そしてへび研の強い想いから、試作品が開発されました。

1998年には当時の厚生省の研究班ができ、へび研と共同で開発し、1000回分以上のヤマカガシの血清が作られたのです。

血清ができてから、ヤマカガシ被害は20件ありましたが、治療が遅れた1名以外に死亡例はありません。

しかし、血清が作られてから20年以上が経ち、作り直しも考えなくてはならない時期に来ています。しかしへび研は、隣接するヘビ園「ジャパンスネークセンター」の収益だけで経営しており、なかなか厳しい状況とのこと。

へび研が運営できなくなったら、ヤマカガシに噛まれた場合、そのまま死に直結するという恐ろしい状況になってしまうかもしれません。レアケースとはいえ、ごく普通にいるヘビなので、事故はどこでも起こりうるわけで、けして見過ごすわけにはいかない問題です。

ヤマカガシは飼育できない

ヤマカガシは毒を持つ危険動物のため、動物愛護法の「特定動物」に指定されています。現在、愛玩目的で飼育することはできません。

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